第7章 女社長の恋人

 

 

ようやく最後の採用面接を終えた夜8時。

 

私は元ヤン女社長のヨシコさんから誘われました。

 

「マリーさんはお酒強いの?」

 

 

えーっ?困るなぁ。。。

もうヘトヘトに疲れてるんですけど。

それに、私、お酒飲めないんですけど。

 

 

おし黙る私に女社長がたたみかけてきます。

 

「アタシは全然飲めないんだよねー。

だからゴハン行こ。アタシの彼氏も来るから」

 

 

え?彼氏?

 

公私混同もはなはだしいでしょ?

 

勤務時間、とっくの昔に過ぎてますけど?

 

なぜ、私があなたの彼氏に会わなくちゃいけないの?

 

 

でも、怖いもの見たさで見てみたいような気もします。

 

 

5000万円を稼ぐ秘密を徹底的に吸収すると決めたんだし、女社長と仲良くなるためにもお供すべきです。

 

 

 

「じゃあ、すこしだけお邪魔します」

 

私は、本当はもう帰りたかったのですが、一応ついていくことにしました。

 

 

 

待ち合わせの場所につくと。。。

 

 

 

痩せて貧相な男性が立っていました。

 

イケメンでもないし、若くもありません。

 

そういう問題以前に、負のオーラが漂っていて、まるで死神みたいに見えました。

 

 

しかし、女社長ときたら今までに一度も見たこともないようなとろけそうな笑顔でデレデレしています。

 

「こちらアタシの彼氏のケイスケさん!」

 

 

「はじめまして。新しく入社しました。富士山マリーです。」

 

「。。。どうも。。。」

 

見た目だけでなく、声も暗い感じです。

 

しかも、挨拶もマトモにできないなんて。

 

ヨシコ社長は、こんな男の人の何がいいのやら?

 

 

 

ゴキゲンなヨシコ社長は、聞いてもいないのに、二人の恋バナをペラペラとしゃべりだしました。

 

ケイスケさんはバツイチですが、ヨシコ社長にとっては生まれて初めて出来た彼氏だということでした。

 

ヨシコ社長は34歳。

 

年齢=彼氏いない歴 だったそうです。

 

 

 

それを聞いて、私は不覚にも目頭が熱くなりました。

 

ヨシコちゃん、本当に苦労したのね。

 

 

昨日、ヨシコ社長の幼なじみでもあるアユミさんから聞いた話がよみがえってきました。

 

背が低くて、太っていて、出っ歯だったヨシコちゃん。

 

家族からも愛情をもらえず、学校や社会からもつまはじきにされてきたヨシコちゃん。

 

何をやってもうまくいかず、30歳までアルバイトを転々としていたヨシコちゃん。

 

今、ようやくネットビジネスでお金を稼げるようになった。

 

そして、人生初の彼氏ができた。

 

 

 

そりゃあ、彼氏ができたことを誰かに自慢したくなる気持ちもわかります。

 

よかったね、ヨシコちゃん。。。

 

 

 

でも、私にはケイスケ氏という男がどうもニオイます。

 

この男、クサイ。。。

 

 

なぜなら、ヨシコ社長はケイスケ氏にデレデレですが、

 

ケイスケ氏がヨシコ社長に好感を持ってる感じがみじんもしないのです。

 

恋人同士の雰囲気じゃない。。。

 

 

 

どう見てもお金目当てのケイスケ氏。

 

話を聞けば聞くほど、ヨシコ社長はケイスケ氏にカモにされているとしか思えませんでした。

 

「ケイスケさんはね、コンサルタントなんだよね」

 

お酒も飲んでいないのに、真っ赤な顔のヨシコちゃんはうれしそうに話しています。

 

「今、私のマンションで一緒に暮らしてるんだ。

毎日、家でコンサルティングしてもらってる。

悪いから、1回3万円ずつ払ってるよ」

 

 

ヨ、 ヨシコ社長ーーーダメですよーーー

 

それ、同棲相手じゃなくて、完全に客ですから!!

 

てか、家に居候させてお金あげてるって、ヒモですから!!!

 

 

「家もオフィスも全部、ケイスケさんにコーディネートしてもらったんだ」

 

 

そうだ!今朝見た50万円の請求書。

 

このケイスケ氏への支払いだわ。

 

趣味の悪い安っぽいデスクとライトで50万円。

 

あれなら、ニトリで買ったほうが、はるかにオシャレ。

 

 

 

「あ、そうだ。私とケイスケさんは来月、1ヶ月間ハワイに行くから。

 

その間、マリーさん会社を頼むね。メッセで指示は出すから」

 

はああああああ?

ハワイイイイイ?

それも1週間じゃなくて1か月もおおおお?

 

新入社員3名だけでどうしろっていうの?

 

 

アナタがカモられても知ったこっちゃないですけど、会社つぶれますよ?

 

会社がつぶれたら、アナタはその男にとって用ナシですよ?

 

 

 

ヨシコ社長はバカだと思っていたし、

 

会社も長くは続かないと予想してはいました。

 

でも、まさか、ここまでバカとは思っていませんでした。

 

 

しかし、このあとさらに予想外の出来事が起きるのでした。

 

 

 

第8章  につづきます★

 

 

 

 

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