第13章 女社長の嫉妬
「なに?」
ノー天気な顔をしてヨシコ社長。
私はこの会社で行われている数々の法令違反についてヨシコ社長に警告することにしました。
「これなんですけど、」
「あー、これねー。気がついた?」
「はい。」
私はヨシコ社長が一般書籍から無断転載している写真を見せました。
「マズイ?」
「マズイです。著作権に抵触します。差し替えましょう。」
「そっかあ。わかった。一時、販売停止にするから、マリーさん差し替えといてよ。」
「わかりました」
聞き分けよく、すんなり応じたので拍子抜けです。
「社長、他にもいくつかあります。」
「ん?」
「法人化したことですし、これからはコンプライアンス(法令遵守)を強化していきましょう」
「え?ナニ?昆布ライスって?」
昆布ライスじゃありませんから。。。(笑)
確かに元おデブのヨシコ社長によさそうですけど(笑)
「税金は払った方がいいです。銀行融資や補助金を引っ張ってくるためにもです」
「マリーさんはホントすごいね!頭イイし、やっぱエリートは違う」
そこへ、階下から上がってきた先輩社員のアユミさんが会話に加わってきました。
「そうなんですよ!マリーさん、すごいですよね!私も本当に勉強になってます」
その瞬間、ヨシコ社長の顔色がサッと変わり鬼の形相になりました。
「ハァ?アンタはだまってて!」
「す、すみません」
アユミさんは小さくなって謝りました。
ヨシコ社長はアユミさんをにらみつけると、不機嫌な顔のまま、プイと外へ出て行ってしまいました。
幼なじみで、社会的にも学歴的にも見た目的にも、どう見てもアユミさんの方が数段格上なのに、この関係性はなに???
入社2日目の通帳記入の時にアユミさんへのお給料支払額が、おこづかい程度で驚いたことを思い出しました。
アユミさん本人にヨシコ社長への服従の理由を尋ねたら、友情と同情からだと答えていたが、本当にそれだけ???
ヨシコ社長が外へ出たのを確かめて、私はアユミさんに話しかけました。
「アユミさんは本当によくやっているのに、報酬少ないですよね?」
「。。。。。。。」
「すみません、記帳の時に見えちゃいました」
「はい。そうなんです、少なすぎですよね?」
「驚きました。アユミさんの貢献度なら少なくともあの10倍はもらうべきです。」
「私も。。。実は私もおかしいと思っていたんです!」
「いいですか、アユミさん。この会社があるのは半分はアユミさんの力です。」
「そうなんです。」
「株式の所有はどうなっていますか?」
「100%ヨシコが持っています。」
「それはオカシイ。アユミさんにも権利があります。」
「やっぱり。。。そうですよね?」
「どうして要求しないんですか?」
「それは。。。」
アユミさんは黙ってしまいました。
ああ、ザ・日本人!ザ・いい人!
日本は、こうした善良な人たちに支えられているのです。
もらうべき賃金ももらわず、使われまくっているのです。
「アユミさん、私が社長に交渉します。」
「マリーさん。。。でも、そんなこと。。。」
「いえ、言わなきゃダメです。私も今の24時間指示を受ける体制はムリです。交渉しましょう」
そこへ、さきほどプイと出て行ったヨシコ社長が戻ってきました。
アユミさんと私が二人で話し込んでいた様子を見て、鬼の形相でにらんでいます。
しかし、私はひるみません。
私は自分の要求は通す主義です。
外資系企業では、毎年、年俸交渉がありました。
「ヨシコ社長、ちょっといいですか?」
するとヨシコ社長は顔を真っ赤にして叫びました。
「マリーさんとアユミは二人で結託して、アタシの敵になる!!」
。。。。。は?
私はキョトンとしてしまいました。
結託?
敵?
仲間はずれにされそうだと思っているの?
ここは会社で、アナタはその社長ですよね?
そうか、ヨシコ社長はこどもでした。
毎日、毎日、たまごサンドとコーヒー牛乳を昼ごはんにしているコドモ。
お子さまランチです。
私はあまりのバカバカしさに開いた口がふさがりませんでした。
こりゃ、ダメだわ。
本当に一刻も早く、おいとましないと。
嫉妬は面倒です。
こんな幼稚な人の面倒は見られません。
このとき、なんだか嫌な予感がしました。
第14章 につづきます★
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